東條英樹首相発言:飛行場のいらない飛行機を早く作れ 昭和18年2月5日


東條英樹首相発言:飛行場のいらない飛行機を早く作れ 昭和18年2月5日


ドラえもんのアイテムを作れ!

現在、日本の首相は安倍さんですが、
もし安倍さんが国会で、
国民や技術者に向かって、

「ドラえもんのアイテムを作れ!」

と’啓蒙'演説をすることを想像できますか?

もしそんなことをしたら、

ネットで叩かれる?

今となっては信じられない状況が
戦時中の日本には
現実にあったんだ、

という興味深い話。

予め言っておくと、この記事は
東條首相を
批判するために書いたのではない

日本は"もうダメだ"と思った

たまたま、
雪の結晶の研究をされていた
中谷宇吉郎さんの話を読んでいたら、
「社会と科学技術、岩波新書1958」

東條英樹総理が
  1. 飛行場のいらない飛行機を早く作れ 
  2. ヨーロッパに半日で行けるような飛行機を作れ 
  3. 油を使わない飛行機を作れ 
と国会で演説したことを聞いて、
「もう日本はダメだ」
と思った、ということが書かれていた。

まさか、本当にそんなことがあったの?
と 半ば信じられなかったので、
ちょっと調べてみた。

中谷宇吉郎さんは、
ゼロ戦などの翼につく雪や氷についても
研究していたそうです

朝日新聞記事 1943年2月6日(昭和18年)

まず、東條発言の次の日
朝日新聞の記事はこうだった

1943年2月6日(昭和18年)

東條英樹発言 朝日新聞記事1943年2月6日(昭和18年)


"諦め"は必勝の敵だ
飛行機珍問答で士気鼓舞
東條さんの決戦哲学

決戦の意気とは「あきらめ」を撃滅する闘志だ
と東條さんは喝破する
5日の衆議院戦時行政特例法案委員会で
渡辺泰邦氏が発明に関する質問を行った時
答弁に立った東條首相は
「ちょっと話が横道にそれますが、、、」
と航空発明家へ3つの難問を提出した。
要約すると ー

実は私の次男に三菱の航空機会社に働いているものがおるので
ふと3つの問題を出してみました。
 飛行場の要らない飛行機
 欧州へ半日で飛べる飛行機
 ガソリンなしで空気中から燃料を補給して飛べる飛行機
 この3問題です

委員たちも瞬間首をひねって考えこむ、
航空発明家全ての人々への試案でもある。
どんな明暗が與(あた)えられるのか、
思わず委員室の好奇心が東條さんの口へ
吸い寄せられたが
與えられた明暗というのはこうだったー

だいたい技術者は
自分の知恵に当てはまなければ
受け付けないものだ
だが宇宙の真理は高遠であり
人間のちっぽけな知恵の遠く及ぶところではない
前記の3問題に対しても
東條さんの次男坊は
「それや無理ですよ」
とばかりに、てんで頭から不可能視し、
考えてみようとも言わなかった ー
というのだ。
東條さんに言わせると ー

不可能だと諦めてしまって、
どこに飛躍的な発明が出来るか
これは素人考えだが、
思い切り高く飛び上がって
地球の回転を利用し
スーッと降りれば
ベルリンだ
というふうにはゆかぬものだろうか

また飛行機は鳥から考えついたものだが、
鳥は飛行機なしで飛び立つではないか ー

というのである。

今は決戦時だから
努力して実現してみせる
意欲が燃え上がらなければ
乗りきれるものではないと、
ここでも士気鼓舞を忘れなかった ・・・

毎日新聞記事 1943年2月6日(昭和18年)

毎日新聞1943年2月6日の記事は、こうだった
東條英樹発言 毎日新聞記事 1943年2月6日(昭和18年)

1943年2月5日 日本はどのような状況だった?

さて、東條総理大臣が演説した
1943年2月5日金曜日が
どのような状況だったのか
背景を見てみる

開戦から1年以上が経過し、

1942年6月 ミッドウェー海戦で 今までの好戦状況が反転、日本が不利になってくる
1942年8月 米国でマンハッタン計画開始
1943年1月 ニューギニアにて日本軍が全滅
1943年2月1日、ガダルカナル島より日本軍が撤退

どんどん厳しい状況に陥りつつなることが
大本営には、当然明らかになっている

戦争は人を狂わす

詳細は下記するが、東條総理が、
実際にどのような発言をしたのか
国立国会図書館速記録を読んでみた。

勝手に要約すると、するとやはり
技術者は、

「ドラえもんのアイテムを作る気概をもて!」

と言っていると思う。

新しい物を作り出す時、

常識にとらわれてはいけない、

それには同意する

もう一度言うと、
発言その日はもう開戦から1年たち、
ミッドウェー海戦負けて、
ニューギニアでは日本軍が全滅、
ガダルカナル島からは撤退、、、

アメリカでは
ドラえもんの夢を語るのではなく、
理論に基づいたマンハッタン計画が進められている。

東條総理ご本人も、半ば、
1940年から、100年後の「理想世界」を待望し、
1940年時点の技術では、荒唐無稽の精神論
を語っているのだと
分かってはいたのだろう

つまり、


国の首長が


そこまで切羽詰まっていたのだ、、、



日本の総理が国会で、
下記するような演説を
しなければならないような
状況に二度としてはいけないと思う

戦争は始めたら、後戻りができなくなる

戦争は人を狂わす


隣に
「刈り上げのお兄ちゃん」
の国があるのが現実だが、、、


戦争はどうやったらこの世からなくすことが出来るのだろうか



解決策があるなら
誰か、
教えてくださいませんか?


実際に東條英樹首相はどのような発言をした?

国立国会図書館
第81回帝国議会 衆議院
戦時行政特例法案外ニ件委員会議事録(速記)第三回
速記録を読んでみた

東條英樹発言 戦時行政特例法案外ニ件委員会議事録(速記)第三回昭和18年2月5日金曜日

国立国会図書館速記録より

第81回帝国議会 衆議院
戦時行政特例法案外ニ件委員会議事録(速記)第三回

昭和18年2月5日金曜日
午前10時27分開議

内閣総理大臣 兼 陸軍大臣
東條英樹君

ー 前略 ー

鈴木貞一国務大臣発言後の
東條英樹 内閣総理大臣 兼 陸軍大臣の発言

今 発明発見という点に付きましてお話がありましたが、
これに對(たい)しては政府としましては技術院を設けまして、
そうして技術ということを大きく取り上げて
国政上に反映させて行きたい、
技術員の使命の一つはそこにあると思います、
それは今 企書院総裁から申し上げたとおりでありますが、
そういう点でなく、今 発明ということがありましたが、
それは私の持論でありまして、
陸軍等につきましてはやかましく言って
指導している點(てん)です、

とにかく技術者というものが、
これは陸軍の技術者だけかもしれませぬが、
どうも自分の学問、自分の経験、
これに囚われてしまう、
そうしてこの範囲に受け入れられるものは、宜(よろ)しい
この範囲に受け入れられぬものは適営ならず、
あるいは不同意だとみな刎(はね)てしまう、
所謂狭量なんですね

そういうことで、
せっかく立派な発明も
この技術者の頭に受け入れられなければ落第です、
これを私は今やかましく言っている、
どうやかましく言っているかというと、
人間の知恵などというものは
いい加減なものです、
いい加減というのは失礼な話ですが、
小さいものです、
宇宙の真理から言えば、
ごく小さいものです、
宇宙の幾多の現象真理というものは廣大なものです、
吾々(われわれ)にその日その日たくさんのことを
無言の間に教えている、
それに比較すると人間の知恵などというものは、
ごく小さいものです、

しかしながら、
従来の学問、経験というものは
大事なものだから、
これを逐次擴大して行って
宇宙のいろいろな現象を
いろいろな方面に活用するということ、
これも必要です、
だからこれも無視してはならない、
それから
玆(ここ)に達観しなければならぬことは自分の知恵を
擴大して行くことと、
もうひとつ、虚心坦懐に
技術を離れて
この世界の宇宙のいろいろの真理、原理、
これに囚えてそれと早く結びつける、
そうしてこの進歩を圖(はか)っていく
これが大事な点である、
技術者は両方の考えを常に持たなければならぬ、
狭量の考えはいかんのである、
それでは大きな進歩は出来ない、
これは電気の発明にしても皆そうである

私は素人的にいうのですが、
少し脱線してしまいますが、
お許し願って、
私の子供に帝大の航空科を卒業した次男坊がいる、
三菱に行って飛行機を一生懸命やっている
今係長か何かやっているが
この子供に3つの問題を出した

第一は、とにかく
飛行機をやっているならば
飛行場のいらない飛行機を早く造れ、
そんな箆棒(べらぼう)なことはできないという
箆棒なことはできてくても
とにかく空中を飛んでいる鳥が皆
飛行場をぶら下げている鳥は見たことはない、
できないはずはないのだ
必ずできなければならぬ

そうすれば簡単に飛行機は使える
そうすると戦術的にも
社会的にも非常に大きなことになる、
それはできないことはないではないか
鳥が現にやっているではないか
それを推進めて行けば出来ないことはない

鳥などを一日眺めたことがあります
餌を見付けて降りる態度、
恰好羽を微妙に動かして、
あの羽は伊達にあるのではない
これは幾多の羽の抵抗をビシッと返して
降りて餌を取りに行く、
すなわちそこらに航空としても
非常に研究の余地があると思うのです
これは今、ちょっと人間が「フラット」を使っている
抵抗をぐっと増やして滑降距離を短くする
あるいは上昇を早くする
あれは一つの羽から出た知恵である、

この鳥などはそういうことは百も承知で、
立派な「フラット」をうんと持ってやっている、
それで飛行場は要らないものが出来ないはずはないと思う
そうすると技術者はそんなことを言っても、
そんなベラボウなことは出来ないと否定してしまう
この否定がお前いけないのだ、
そこの鳥がやっている
なんとかしてそういう飛行機を作っていきたいと言う
工夫することが大事なのだ

第一の問題が落第なので、
それから第二の問題、

ここから「ヨーロッパ」に
半日で行くような飛行機を作ってみろ、
そんなベラボウなことは出来ない、
またこれをやれ、
出来ないはずはないじゃないか、
たとえば、俺は知恵を貸してやろう
ここでもって、
東京の上で三万メートルぐらい
パァッと飛行機で上がり、
重力を切ってみろ、
どうなるのだ、
重力を切ると黙っていても
地球が半日で回転してしまうならば、
この時に降りてしまったらいいじゃないか。
この時には半日で行けるはずだ

そんなベラボウなことは困ると言っても
理屈はこの通りで、
これを推進めたのがそうなる、
これを技術者が否定するが、
これを煎じ詰めていくのが成層圏飛行機、
これをもってもっと進歩さしたならば、
それは重力を切ることになる、
そうすると半日で行けることになる
それを簡単にそんな馬鹿なことと
技術者は片付けてしまう
第二の問題、これも落第だ。

第三の問題は、今油を使っている、
あの燃料を止めて、
油を使って走るというような
馬鹿げたことは止めたほうがいいではないか
油を使わず、空中からドンドン燃料を取って
いくらでも走っていける飛行機を作ってみろ、

油という問題に制限されるから困る
しからば空中に燃えるものはないか
それはご存知の通りたくさんある、
水素でも何でもこれを簡単に取って
グングン走って行ったならば
少しも燃料に不自由はしない
そういうものを発明しろという

それも出来ないという
要するに技術者と言うものは
自分の知恵に嵌(はま)らなければならない
それでは物は進歩しない

今私の言ったのは
とぼけたようなことですけれども
これは非常に重要なことを指摘していると思う
そうすればナントカそこに工夫していく
という頭にならなければならぬ
自然はそれを教えている
私は今陸軍の方にも
そのことをやかましく言っておりますが
とにかくそういうものである、

それは技術者ばかりではありませぬ
軍事的の問題にしても
私は軍事の専門家だが、
往々にして軍事的の事柄が
軍事の専門に囚(とら)われて、
時として軍人以外の人が
大きな立派な案を教えてくれることがある
ハハァこれはおれは囚われているな、
そういうように感ずることがあります、

あなた方も立派な政治家である
政治家でもそれにとらわれてしまうと、
寧(むし)ろ吾々(われわれ)みたいな
政治などは一向に知らない男が
場合によって偶(まれ)には良いことを言うこともある
それだから技術者ばかり責められない、

技術に囚われていることは
いかんということを言っておりますけれども、
これは啓蒙である
そういうふうにあなたがたの足元にも
そこら中に幾多発明工夫というものはあると思う、
これを見逃さないように行くことが、
大きな進歩の原因であると思う、
少し座談的になりましたが、、、、

- 後略 -



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